2012年11月25日日曜日

カウンセリングからの学び

先日、企業の社員に対してカウンセリングを行っている方とお話をする機会がありました。悩みを持った社員からの相談を行っているそうです。カウンセリングについてお話を聞くことができ、とても参考になりました。

その方はカウンセリングでは以下を意識しているとのことです。

◆相手の話を聴き、受け止める
カウンセラーが何かアドバイスをしてあげるのではなく、相手の話をひたすら聴き、受け止める。
◆相手は、自分で解決する力を持っていると信じる
カウンセラーが悩みを解決するのではなく、相手が自ら気付き、悩みを主体的に解決できるように援助する

私は企業に対して研修を行っていますが、研修を実施する際にもこの話はとても参考になると思いました。研修には仕事に前向きな受講者が常に参加するわけではありません。時には悩みを抱えている人も参加されます。このような受講者に対して前向きに取り組んでいただくことはとても難しいです。今まで、前向きでない受講者に対しては、アドバイスなどを通して、私自身が「受講者を前向きに変える」ことばかりを考えていたと思います。

例えば、ある会社の若手の方に研修を行った時の話です。受講者は、今後メンバーを持ち、チームで成果を上げることを会社から求められているステージにいました。研修は、個人プレーからチームで成果を出す意識を持ってもらう目的で実施しました。受講者は、仕事に慣れてきたことや、お客様からあまり褒められることがないという仕事の特徴もあり、モチベーションが下がっている人が大半でした。研修では、まずお互いの仕事での課題や悩みについて共有する場を持ちました。
そして次に、チームで成果を上げることの気づきを出す目的で、自分達が会社から求められていることは何か?を考える場を持ちました。しかし、なかなか期待する答えが返ってきません。私は、気付きが出てこない焦りから、受講者の話をしっかり聴くことができていませんでした。どのように「受講者を変える」のかばかり考えていました。そして、最終的に、「みなさんが会社から求められていることは、チームで成果を出す意識を持つことです。」と一方的に伝えてしまいました。
結果、受講者は講師から言われたことにより、理解はしてもらえたと思います。しかしながら、納得感は少なかったのではないかと後から考えて反省しました。私は、「相手の話を聴き、受け止める」こと、そして、「相手は、自分で解決する力を持っていると信じる」ということが意識できていなかったと感じています。

研修のなかで、受講者本人が自ら気付き、意識を変えたいと思うためには、まず講師が「相手の話を聴き、受け止める」こと、そして「相手は、自分で気付き、解決する力を持っていると信じる」ことがとても重要だと思いました。講師が話をしっかり受け止め、話をしながら自然と受講者が自ら気付いていくようなことができるようになりたいと思いました。人は、他人から言われたことよりも、自ら気付き納得したことのほうが、より主体的に行動をしていくと思います。講師は受講者が自ら気付くことができるために、最大限の支援をしていくことが大事だと改めて思いました。

2012年11月18日日曜日

中堅社員のモチベーションを上げるには?

先日、NHKの特報首都圏という番組で、「社員のやる気 どう引き出す?~苦悩する中堅社員~」という番組を見ました。
この番組では、中堅社員を5年目~40代前半(管理職一歩手前)までと定義していました。中堅社員は仕事の経験を積み、一人で成果を出せるようになっている段階です。会社からは、次のステップとして一人ではなくより多くの人を巻き込み、さらに大きな成果を出してほしい、後輩の育成をしてほしいなど大きな期待が寄せられていると思います。しかし、JTBモチベーションズの調査によると、最近中堅社員は他の層の社員と比べてモチベーションが著しく低下しているとのことです。なぜ、中堅社員のモチベーションが下がってきているのでしょうか?

理由としては、
・成熟した市場のなかで閉そく感があり、自身の目標を持ちにくくなっている
・仕事のマンネリ化により、面白みや自身の成長を見い出せなくなっている
・厳しい経済環境のなか、中堅社員には現場の中核として、より少ない人数で高い成果を出すことが期待されている。しかも、自身の成果だけでなく、後輩の育成も求められているため、プレッシャーが高く疲弊してしまっている
などが考えられると思います。

番組では、中堅社員のモチベーションを上げるためには、社員の「承認欲求」と「成長実感」がポイントであると言っています。参考になることもありましたので、ご紹介します。

◆承認欲求
人にはもともと周囲から「承認されたい」、「受け入れられたい」という欲求があります。社員は、会社から必要とされているという感じることにより、モチベーションが高くなるとのことです。これは、中堅社員だけに当てはまることではありません。新人や若手の時は、育成観点で上司から承認されることが多かったかもしれません。しかし、中堅社員は成果を出すことが当たり前になり、さらに高いレベルの業務を期待されることから、会社から承認される機会が少なっているのではないでしょうか?会社の業績を上げるためには、中堅社員に対しても意識して承認し、モチベーションを上げることがとても重要だと思いました。
番組では、看板広告をしている会社を紹介していました。この会社は、JTBモチベーションズが実施した「社員モチベーション調査」で、全国4000社の中で、1位の高得点をあげました。バブル崩壊後に業績が悪化して、社員の離職率も高かったとのことです。しかし、社員のモチベーションを高い状態にする取り組みを意識的に行ったことで、業績がV字回復したそうです。例えば、毎朝、社員同士がペアになって大きな声を出して3本勝負のジャンケンをしています。お互いが笑顔で声をかけあうことでコミュニケーションが活性化されるとのことです。また、毎朝社員同士、仕事の努力を感謝し合う「Thanks card」を送り合うこともしています。お互いに感謝し、承認し合うことで、自分が必要とされているという実感が湧き、モチベーションを高く持つことができるのだと思います。
私はこの例を見て、モチベーションは、ちょっとした取り組みだけでも高めることができるのだと思いました。またモチベーションは一人で高めるのではなく、チームで高め合うことが有効であることを感じました。

◆成長実感
自分自身が一歩一歩成長していると実感することで、モチベーションが高くなるとのことです。先ほどの看板会社では、会社に求められるスキルをすべて洗い出し、それぞれのスキルを表にして職場に貼りだしました。そして、それぞれのスキルに対して、社員一人ひとりが今どれくらいのレベルにあるのかをシールの色で分かるようにしました(例えば、そのスキルに関して、教えることができるレベルは「赤」のシール、知識を持っているだけのレベルは「青」など)。それぞれのスキルに関しての習熟度が上がるとともに、シールの色が変わります。自身の成長が、目に見えて分かることで、より達成感を感じることができるとのことです。特に中堅社員はマンネリ化する傾向にあり、自身の成長を実感する機会が少なくなってくるため、目この取り組みは有効だと思いました。
私はこの例を見て、それぞれの社員が自身の成長を目に見えて分かるようにすることで、モチベーションを高めることができると思いました。また、他の人にも自身のスキルの状態が共有されることによって、仕事のお願いや、サポートなどお互いに協力しやすくなると思いました。

以上、中堅社員のモチベーションを上げる取り組みについて書いてきました。その他の取り組みとして、自分達でも自社の今後のビジネスを考え、チャレンジできる機会を持つことも有効だと思いました。さらなる成長のために、現場のことだけでなく視野を広げ、市場や競合の状況、自社の戦略を理解し、今後の新しいビジネスを考えることで、モチベーションを高くできるのだと思いました。

2012年11月4日日曜日

消費者のための製品づくり

先週のブログに続き、先週の日曜日に放送されたNHKスペシャルの「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」の第2回、「復活への新戦略」を見ました。

番組では、中国の家電メーカーのハイアールを紹介していました。ハイアールの主要製品は冷蔵庫や洗濯機などの白物家電です。ハイアールは、2011年に、三洋電機から冷蔵庫と洗濯機事業を買収し、今では世界165ヵ国以上で生産・販売をして業績も伸ばしています。
番組で紹介されていたのは、7年前から赤字が続いていた三洋電機が経営していたタイ工場でした。しかし 三洋電機からハイアールに経営が移ったことで、去年から黒字になりました。番組では、タイ工場が黒字になった理由として、工場内の組織や社員の意識が変わったことが一番の理由だと伝えていましたが、どのように社員の意識が変わったのでしょうか?

◆消費者のための製品づくり
番組では三洋電機時代から工場長として働いていた方が登場していました。三洋電機の時は、工場では、生産のことだけを意識して製品をつくっていれば良かったそうです。しかし、ハイアールに経営が変わり、消費者を徹底的に意識した製品づくりをすることを求められました。工場長として、販売台数を増やすという目標達成も求められます。そのため、工場長は、現在の売れ筋情報や消費者の嗜好に敏感になり、自主的に量販的へ調査に出かけています。そして、販売台数を意識して、消費者を意識したデザインも考え、デザインの変更もしているそうです。
また、三洋電機の時は、工場に他の部門からの情報が入ってきていませんでしたが、現在は、販売や研究開発の情報なども共有されるようになったとのことです。そのことにより、工場だけの狭い視点だけでなく、会社全体として消費者のための製品づくりを考えることができるのだと思います。

お恥ずかしいことですが、正直ハイアールのことは良く知りませんでした。また、中国の企業はあまり消費者のことを考えたモノづくりをしていないのではないかと思っていました。しかし、ハイアールがここまで徹底的に消費者を意識した製品づくりをしていることに驚きました。代表の張さんは、松下幸之助さんや稲盛さんなど日本の経営者からビジネスを徹底的に学んでいます。日本が油断していた間、中国をはじめ、他のアジアの企業は日本から学んでいたのだと思います。

私は、番組を見て、社員は消費者のための製品づくりへの情熱を本来持っている人が多いのではないかと思いました。しかし三洋電機の時は、消費者のニーズは他の部門が考え、工場は生産だけを行っていました。そのため、社員の消費者に対する製品づくりへの情熱が薄れてしまったのだと思います。ハイアールが成功した理由の一つは、工場の社員にも消費者のことを考えてもらうことで、社員の情熱を引き出し、社員が主体的に行動できたことだと思います。

NHKスペシャルの「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」の第1回と第2回を見て、当たり前のことですが、消費者のための製品づくりを徹底し、社員の情熱を引き出し、社員が主体的に行動する組織をつくっていくことが大事だと思いました。今後の日本の家電メーカーの今後の成長を期待しています。