2012年9月30日日曜日

アクティビティを取り入れた研修の特徴

私は主に企業に対して研修の講師をしていますが、リーダーシップやチームワークの研修では、アクティビティを取り入れて研修を行うこともあります。アクティビティとは、主に「体を動かしながらチームで目標や問題解決に取り組む活動(ゲーム)」のことを言います。今回は、アクティビティを利用した研修の特徴を紹介します。

◆短時間に他の参加者と深い関係性を築くことができる
研修でアクティビティを取り入れることにより、短時間でお互いの距離を近づけ、本音で話せる関係性を築くことができます。なぜなら、アクティビティで同じ目標に向けて議論を重ね、一生懸命に取り組む共通体験をすることで、仲間意識・信頼関係が生まれやすくなるからです。それにより、研修では、表面的ではなく本音で話をすることができ、より深い議論とアウトプットを出すことができます。

◆チームワークやリーダーとして必要な要素を学ぶことができる
アクティビティを行った後、必ず振り返りを行います。振り返りを行わないと、楽しかったという感想で終わってしまいます。振り返りでは、成功・失敗した原因(プロセスや、お互いの関係性、リーダーとしての行動など)にフォーカスして話をします。そこから、チームとして成果を出すために必要な要素や、リーダーとして求められる行動を学びます。そして、アクティビティから学んだチームワークやリーダーシップについては、職場でも応用することができます。なぜなら、チームで目標を達成するために必要なチームワークやリーダーとして必要な要素は、ゲームでも職場でも共通するところが多くあるからです。振り返りでは、アクティビティからの学びから仕事にどのように応用するか、お互いにアイデアを出し合うことで、仕事での行動につなげていきます。

◆自身の強みと弱みに気付く
アクティビティは、ゲーム感覚で構えずに行うため、普段の思考や癖(「素」の自分)が出やすくなります。そのため、振り返りで他の受講者や講師からフィードバックを受けることで、自身の強みと弱みを認識することができます。アクティビティで同じ目標に向かって一緒に取り組んだメンバーからの意見のため、フィードバックは納得感を持って受け入れることができます。また、自身が取った姿勢や行動が、アクティビティの成果(成功・失敗)に反映されやすいため、自身の姿勢や行動の良し悪しについて振り返ることができます。

以上、アクティビティを取り入れた研修の特徴をご紹介しました。アクティビティは、リーダーシップやチームワークの研修ではとても有効な手法です。なぜなら、アクティビティで学ぶことで、目に見えないリーダーシップやチームワークに関して、実感値を持って納得することができ、行動変容につながりやすいためです。

しかしながら、アクティビティからの気づきだけでは、仕事での具体的な行動を考えるのは難しいと思います。従って、仕事での具体的な行動を考えるために、「アクティビティ」と共に、「ビジネスケース」を使って行うことが重要です。それにより、アクティビティから学んだ行動や姿勢を、仕事の場で実践する具体的な行動として考えることができます。

2012年9月24日月曜日

仕事のなかで人を育てるには

みなさんにとって仕事とは何でしょうか?お金を稼ぐ手段、趣味などいろいろあると思いますが、私は、「自身を成長させる場」だと思っています。なぜなら、社会に価値を提供するために、努力をして新しい知識やできることを増やしていくことができるからです。
NHKのプロフェッショナルで、「仕事こそが、人を育てる」というタイトルに惹かれ、2007年に放送された南場智子さんの放送を見ました。南場さんは、株式会社ディー・エヌ・エーを1999年に設立して、12年間代表として会社を成長させ、2011年に療養中の夫の看病に力を注ぐため代表を退任し、取締役になりました。南場さんは、社員5人からスタートしたディー・エヌ・エーを、今では約2000名の会社に成長させました。南場さんは、経営者の仕事は、「強い組織・人材をつくること」と言って、様々な取り組みをしています。「仕事こそが、人を育てる」とのことです。南場さんは、仕事のなかで、どのように強い組織・人を育てる取り組みを行っているのでしょうか?

◆成功体験の機会を与える
南場さんは、苦しみを乗り越えて成功体験をすることで人が育つ。成功体験を積める機会を提供することが重要だと言っています。社員に、一歩大きなこと、難しいことを任せます。会社としては、社員には毎回同じことをさせたほうがリスクはありませんが、成長しません。例えば、番組では、社内で新規ビジネスに関して社員から企画を募集するプロジェクトを紹介していました、ゼロから企画を立ち上げさせて、社内で議論を重ねて練り上げる機会をつくることで、成長させる機会をつくっています。番組では、ネットで保険の営業とユーザーを結びつける企画を考えた人を紹介していました。彼は、2年前に自らの企画で新規ビジネスプロジェクトを立ち上げました。しかし、プロジェクトは2億円の目標を掲げてスタートしましたが、結局は1千万円にも届かず、失敗してプロジェクトは終了してしまいました。南場さんは、彼に成功体験を積ませることが必要だと考えて、企画に対して積極的にアドバイスや、個人的に相談に乗るなどしていて、忙しいなか、人の成長を真剣に支援する姿勢にはとても共感しました。

◆経営者が一番前のめり
南場さんは、新しい企画を考えた社員と話をする時に、少しでも面白い点があれば、企画を考えた社員以上に前のめりになることを意識しているそうです。企画を考えた社員に、企画の面白さを伝え、実現させるためにどうすればよいかを一緒に考えることで、社員のやる気を高めています。社員は、「この人のためなら仕事をがんばろうと思える」、「社員を牽引していくオーラを持っている」と発言をしていました。私は、リーダーは、この人のために仕事をしたいと社員に思ってもらうこともとても重要だと感じました。

◆大黒柱だから抜く
インターネットの業界はスピードが早いため、市場の環境変化に合わせて頻繁に組織も変えていったそうです。人事異動については、南場さんがすべて権限を持つようにしています。なぜなら現場は業績を上げるために、仕事ができる大黒柱を中心に仕事を行い、周囲のメンバーが育たないからだそうです。南場さんは、新規プロジェクトが立ち上がる時など、あえてそれぞれの部署の大黒柱を引き抜きます。現場のリーダー達から抵抗されることが多いとのことです。しかし、大黒柱を失うことで、他の現場社員は危機感を感じて、がんばることで次の大黒柱が育ってくるという信念を持ち、リーダー達と本人を説得して異動してもらうとのことです。
大黒柱がいることで他の人は頼ってしまい、能力を発揮できてないとすると、とてももったいないと思いました。大黒柱が抜けた分を補うために、残された社員達は、それぞれが危機感を持ち努力することで、成長していくのだと思います。

南場さんは経営者として、「強い組織・人材をつくる」ために、様々な取り組みを紹介しました。社員一人一人が主体的に行動し、チャレンジしていける場を意識して創り出していると思いました。ディー・エヌ・エーの組織の基本理念は、南場さんの考え方を表していると思いました。
ディー・エヌ・エーの組織の基本理念「球」とのことです。ホームページでは、
・球の組織
DeNAの組織の基本理念は「球」です。社長を頂点とするピラミッドではなく、ひとりひとりが表面積を担う球のイメージです。誰も他の人の影に隠れることはなく、新米社員も含め、必ずDeNAを代表するフィールド(表面積)を持ってもらいます。
・成長=より大きな表面積を担うこと
「球」の組織におけるメンバーの成長とは、各自が自らの責任を全うし、より大きなフィールドを担うようになることです。多様な個性を持ったメンバーが表面積を広げることが、「球」の拡大、すなわち、DeNAが社会に与えるインパクトの拡大につながります。と書かれています。
一人一人が会社の代表としての意識と責任感を持ち、常にチャレンジして能力を発揮していくことで、組織が強く・大きくなっていくのだと思います。
私は今回のブログから、自身を成長させるために、常に一歩大きなこと、難しいことに挑戦していくことが大事だと改めて感じました。新しいことに一歩踏み出すことは、躊躇してしまう気持ちもありますが、自身を成長させるためにはとても重要なことだと思います。

2012年9月16日日曜日

顧客に幸せを届け感動を生み出す会社とは

みなさんは、インターネットで買い物をしたことがありますか?私は本の購入やプレゼントなどの購入でよく利用しています。
少し前になりますが、音楽、動画、ゲームなどを購入できるサービスを行っているサイトで、大変困ったことが起きました。そのサイトで、他人に自分の口座を乗っ取られてしまい、勝手にゲームを購入されてしまいました。このようなことは初めてで、とても不安になりました。そして、すぐに電話で状況の確認をしたいと思いました。しかし、このサイトを運営している会社は、メールでの問い合わせしか行っていませんでした。状況を説明し、どのようにしたら良いかメールをしたところ、3日後にメールが返信されて来ました。
返信内容としては、
・口座を一時的に無効にし、クレジットカードを使用できないようにした
・購入履歴を調べて注文番号を送ってもらえれば調査する
とのことでした。
返信までの3日間は、とても不安な日々を送ることになってしまいました。その後、購入履歴を調べて、何度かメールでやり取りをしました。しかし、私の聞き方も良くなかったのですが、返信をもらうまで時間がかかり、期待していた返信もされず、疲れてしまいました。結局、登録されていたはずの私のクレジットカード番号が、他人のカード番号に書きかえられていたため、購入されたゲーム料金の支払いはしなくても良いことが分かり、ほっとしました。しかし、今回のサポートの対応で不信感を持ってしまい、このサイトを利用したい気持ちが薄れてしまいました。

オンラインで商品を販売している会社は、電話の受付をしていないところや電話対応していてもホームページ上で、電話番号が分かりづらいところに記載している会社が多いのではないでしょうか。オンラインでサービスを提供しているため、電話ではなく、メールなどオンラインのみで顧客と連絡を取り合うのは当然かもしれません。または、電話対応をすることで人件費などコストがかかってしまうので、積極的には行っていないのかもしれません。しかしながら、すべてオンラインだけで顧客に満足したサービスを提供できるのでしょうか?

このような疑問を持ちながら、インターネットで靴の販売をメインで行っているアメリカの「ザッポス」という会社を知りました。はじめて知った時は、靴は試着が必要なのに、オンラインで売るのは無理ではないかと思いました。しかし、ザッポスは、創業してから10年で10万ドルを超える売上を実現して,オンラインシューズ市場で30%を超えるトップシェアになり、ビジネスとしては成功しているようです。
ザッポスのサービスとしては、
・靴を注文して、サイズが合わなかった場合は、1年間まで無料返品可能(無料返品サービスをはじめて導入した会社だそうです)
・送料、返送料金は無料
・原則として注文を受けてから翌日には到着
・24時間の365日無休のコンタクトセンター
など様々なサービスを行っています。

ザッポスが行っているサービスのなかで、私がなによりも素晴らしいと感じたのは、ホームページの一番上にフリーダイヤルが掲載されていて、購入やサポートの対応で、積極的に顧客と電話で話をすることです。ザッポスは、顧客との電話を最高の営業の機会と考え、「顧客に幸せを届け、感動を生み出す」ことに最大限の力を注いでいます。電話の対応に対しては、マニュアルがなく顧客に感動を与えることであれば、ほぼ何でも行っても良い裁量が与えられているとのことです。そのため、評価は通常、コンタクトセンターの基準である「売上」や「対応件数」、「平均処理時間」はなく、顧客にどれだけ感動を与えられたかで決まるとのことです。
例えば、有名なエピソードをご紹介すると、
・ある顧客が母親のためにザッポスから靴を購入しましたが、母親が亡くなってしまったため返品する旨をザッポスに伝えました。その話を聞いたザッポスの社員は、宅配業者を自宅まで派遣して靴を回収するように手配したとのことです(通常であれば、顧客が集配所までもっていかなければいけない)。そして、翌日には手書のメッセージでお悔やみの手紙と花束が届けられたとのこと。顧客は感動してザッポスのファンになったとのことです。
・顧客が求める靴をザッポスが取り扱いをしてない場合や、在庫が切れている場合は、その靴を取り扱っている他社サイトを最低3社紹介してきたそうです。
・ザッポスの顧客サービスの噂を聞いたある人が、試すつもり電話をして、ピザの注文を頼んだら、わざわざ近くのピザ屋さんの連絡先を調べて紹介してくれたとの話もあります。
これらのサービスによって、75%の顧客がリピーターになっているとのことです。私は、正直ザッポスがここまでサービスをしていることに驚きました。しかし、ここまで顧客に感動するサービスを徹底的に提供するからこそ、顧客の心を鷲掴みにして、高いリピート率につなげることができているのだと、納得しました。

ザッポスがビジネスを成功させている理由の一つとしては、会社を「靴を販売する会社」ではなく、「顧客に最高のサービスを提供する会社」と位置付けたこと。そして、それを達成するために、社員自ら会社の「Core Value(中核となる価値観。例えば、「Core Value」の一つ目は、「Deliver WOW Through Service(サービスを通してWOWを届ける)」を明確にして、採用、育成、評価などの仕組みをつくり、徹底的こだわり日々実践しているところだそうです。

今後、ITの技術がますます進化し、オンラインでサービスを行っている会社は、より便利で新しいサービスを、効率的に行っていくことを追求していくことは当然必要です。それと同時に、顧客に感動を与えるサービスを高めることも重要だと思います。なぜなら、技術やサービスは比較的容易に真似をされてしまい、差別化を維持するのは難しいからです。他社と差別化していくためには、時間がかかると思いますが、顧客に感動を与えることができる人材を育て、顧客に期待以上のサービスを提供することで、ファンを獲得しリピートをしてもらえるようになると思いました。

2012年9月9日日曜日

ディズニーのホスピタリティとは

みなさんは、ディズニーランドやディズニーシーには行ったことはありますか?2つの施設では、年間2500万人以上の来場者があり、9割以上がリピーターだそうです。すごいですね。ディズニーは、施設をステージのショーととらえ、従業員のことをショーに出演する「キャスト」、お客様をショーに参加する「ゲスト」と呼んでいるそうです。私はそれぞれ3回遊びに行ったことがありますが、キャストはいつも笑顔で、とても楽しそうに仕事をしています。ゲストを楽しませ、親切に対応する姿勢にはとても感心しています。東日本大震災の非常事態の時でさえも、キャストはゲストのことを第一に考え、冷静に対応したことでパニックにならなかったそうです。また、ゲストに対して自らの判断で行動をしていたキャストが多かったそうです。あるキャストは、販売していたぬいぐるみを防災ズキンの代わりにゲストに配っていたそうです。またあるキャストは、ゲストがお腹をすかせていると考え、店舗で販売していたチョコやクッキーを無償で配布したそうです。キャストは自身の安全や、家族・友人のことなど心配だったと思いますが、ゲストを最優先で考えて行動していたことはとても素晴らしいことだと思います。ディズニーでは、なぜキャストがゲストのことを一番に考えて行動することができるのでしょうか?

「9割がバイトでも最高の感動が生まれる ディズニーのホスピタリティ」という本を読みました。この本では、ディズニーが30年近く愛されてきた理由として「ホスピタリティ」がポイントだと言っています。この本では、「ホスピタリティ」と「サービス」には違いがあると言っています。「ホスピタリティ」とは、「相手に対する主体的な思いやり」と定義し、「自ら相手の気持ちになって、相手の立場に立って、共に考えてあげる気持ち・心・言動」のこと。「サービス」とは、「お客様に対して履行しなければいけないこと」です。ゲストに予想外の感動を与えてリピーターになってもらうためには、「サービス」だけでは足りず、「ホスピタリティ」が必要とのことです。しかしながら、「サービス」は、接客の手順などマニュアルにできますが、「ホスピタリティ」は、マニュアルにできないとのことです。目の前のゲストが今どんな気持ちで、どのように接すれば喜んでもらえるかは確かにマニュアルにはできません。ディズニーのキャストは目の前のゲストに対して、自分なりに考えて「ホスピタリティ」を実践しているとのことです。

この本では、「ホスピタリティ」を実践できるキャストをディズニーがどのように育成しているか、考え方が書かれていますので、紹介します。

◆「ミッション」と「行動指針」の共有
ディズニーでは、「ミッション」と「行動指針」が明確にあり、キャストに徹底的に伝えています。「ミッション」とは、その組織がめざすべき方向性のことで、組織の存在意義です。ディズニーの「ミッション」は、「すべてのゲストにハピネスを提供する」です。このミッションを全員に共有し、繰り返し伝えていくことにより、キャストは自然に「ゲストのために」という「ホスピタリティ」が自然に芽生えてくるそうです。
そして、「行動指針」とは、「ミッション」を達成するために、どのように考え、どのように行動するかの基本となる方針のことです。
ディズニーの「行動指針」は、英語の頭文字を取って「SCSE」と呼ばれます。「安全性(Safety)」「礼儀正しさ(Courtesy)」「ショー(Show)」「効率(Efficiency)」で、キャストは、この優先順位で行動することが求められます。
「安全性(Safety)」:ゲストにハピネスになってもらうためには、まずは「安全」を最優先させます。怪我などしてまったら、楽しい思い出が一瞬でなくなってしまいます。
「礼儀正しさ(Courtesy)」:すべてのゲストはVIPだと考え対応します。親しみやすい礼儀正しさを求め、笑顔、挨拶、アイコンタクト、身だしなみをきれいにすることを実践します
「ショー(Show)」:園内を舞台と考え、「オンステージ」と呼び、オンステージ上のすべてを「ショー」としてとらえ、すべてのゲストに素晴らしい体験をしていただくことを重要視します。
「効率(Efficiency)」:安全、礼儀正しさ、ショーを心掛けた上で、チームワークを発揮することで効率を高めます。お互いに助け合うことで、「ホスピタリティ」をゲストだけでなく、キャスト同士実践することを求めています。
行動指針もキャストに繰り返し伝えることで、キャストはお客様を目の前にしてどのような行動をすれば良いのか判断でき、実践できるのだと思います。

◆現場で実践できるための仕組み
上司や先輩が、キャストに積極的に声をかけ、キャストの接客に対してフィードバックやアドバイスをして、フォローをするそうです。それによって、「ミッション」と「行動指針」を具体的に現場でどのような行動をすれば良いのか学ぶことができます。また、キャストは、上司や先輩が自分のことを見てくれている、認めてくれていると感じ、さらに主体的・自主的に仕事に取り組むようになるとのことです。
また、ディズニーには、日頃からキャストの主体的・自主的な行動を許す風土があるとのことです。ミッションと行動指針に沿って、ゲストに喜んでもらえることを自ら考えて行動することを推奨しています。上司や先輩から言われて行動するよりも、自ら考えて行動したことに対してゲストから喜んでもらえることで、達成感や喜びを感じ、さらに自ら工夫して取り組もうとしようとするのではないでしょうか。


多くの会社では、顧客満足を第一に考えて行動するように社員に伝えていると思います。しかしながら、社員が自ら主体的に実践できている会社は多くないと思います。私はディズニーのキャストがゲストを最優先に考えて行動できている一番の理由は、「キャストの主体的な行動を許す風土」と「上司や先輩からのフィードバックやアドバイス」が大きいと思いました。なぜなら、会社から言われたことだけをするのではなく、自ら考えて行動したことが直接顧客満足につながることで、達成感を感じ、自信を持てるからです。自信を持ったキャストは、さらに自ら考えお客様に喜んでもらうために主体的に行動するのだと思います。また、「上司や先輩からのフィードバックやアドバイス」を随時行うことで、成功体験を積ませたり、さらに高い顧客満足を促進することも重要だと思います。

「ホスピタリティ」を実践できる社員を育てるためには、「主体的・自主的な行動を許す風土」と「上司・先輩からのサポート」が重要だと思いました。

2012年9月2日日曜日

現場の力を最大限に引き出して成果を出すリーダーとは

8/20に放送されたNHKプロフェッショナル仕事の流儀を見ました。今回は、日本レストランエンタープライズというJR東日本グループの外食企業に勤めている大宮営業所所長の三浦由紀江さんでした。専業主婦をずっとされていたそうですが、44才の時にパート社員として働き始めると、担当する売り場の売り上げが急上昇し、53才で営業所長に抜擢されたそうです。現在、JR大宮駅構内の売店など9つの主に駅弁を扱う店舗を管理し、店舗のパート社員から、事務所の正社員など100人以上の部下を統括しています。三浦さんが所長になってから営業所で初めて売上を10億円以上にするなど素晴らしい成果を上げています。

しかし、営業所長になったころは、部下からはパート上がりになにができるのかと言われ、部下達は積極的に仕事をしない状況でとても辛い状況が続いたとのことです。その状態の時に、上司から「自分の得意なところから始めればいい」と言われ、リーダーとして無理な背伸びをしていたのではないかと気付いたとのことです。苦手なパソコンは自分でなんとかせずに、部下に助けてほしい素直にお願いする、その代わりに得意な販売に力を入れるなどを行いました。また、怒るのをやめ どんな小さなこともほめて感謝することに決めたとのことです。組織の中で人を育てるのは、子育てと同じで、「人のいいところを見つけ、そこを伸ばす」ということの重要性に気付いたとのことです。

それから、三浦さんは所長として部下に対して、以下を意識して行動するようになりました。

◆声をかける
三浦さんは部下に対して、「一番大事なのは声をかけること」と言っています。なぜなら自分がパート社員の時に声をかけられたらうれしかったからとのことです。出勤した日は駅の店舗に必ず立ち寄り声をかけ、店員の体調や仕事への意欲が下がっていないか確認しているとのことです。意欲が下がっている店員に対しては、さりげなく声をかけて相談に乗っています。部下の立場では、リーダーが自分のことをちゃんと見てくれている、気遣ってくれているといるだけでうれしく、リーダーのためにがんばろうと思うのではないでしょうか。三浦さんは、店舗の社員の方に声をかける時に、「今日は商品がきれいに並んでいますね。さすが〇〇さんだから。」と声をかけていました。部下に対しては、「ほめる時には事柄ではなく人柄をほめる」、「叱る時は人柄ではなく、事柄を叱る」とよく聞きますが、三浦さんは意識して「部下の人柄」をほめているのだと思います。事柄ではなく、人柄をほめられることで人として自分自身を認めてくれたとうれしさを感じ、もっとがんばろうと思えるのではないでしょうか。

◆任せる
店舗でのお弁当は80種類ほどあり、日によって1000~2000個と発注する数に幅があるそうです。売れ残れば利益が減るため、発注する弁当の数をいかに的確に発注できるかがポイントとなります。以前は、事務所の社員がすべて発注していたそうですが、三浦さんは、弁当の発注を売り場の店員に任せる仕組みに変更しました。なぜなら、店舗の社員は毎日お客様のことを考えているため、現場が一番分かっているからとのことです。店舗の社員は、三浦さんに指示をされたことをするのではなく、「余らせても足りなくても責任はこっちで取るから思うようにやってごらん」と言われて行動しているそうです。店舗の社員は、仕事を任されたことに対して責任感と誇りを持ち、自分で考えて行動することができることで、やりがいを持って取り組むことができるのではないでしょうか。

◆成功させる
三浦さんの部下で、鉄道博物館の店舗の支配人がいました。彼はアルバイトで入社して、真面目な働きが認められて社員になり、現在は支配人にまでなりました。彼は真面目な性格ですが、自信を持って自分の意見を伝えることができないという課題がありました。以前、新しい弁当の開発を支配人と三浦さん、そして弁当の老舗メーカーの担当者とで行いました。その時に、彼は、100年を越える老舗メーカーの担当者を前に気後れしてしまい、自分の意見を伝えることができませんでした。三浦さんは、支配人には自信を持って自分の意見を伝えられ、楽しく仕事をしてほしいと考えました。そのためは成功体験を一つ積ませることで、自信の芽を出すことが重要だと考えました。そこで、再度新しい弁当の企画を支配人と三浦さん、そして弁当の老舗メーカーの担当者と行う機会を設けました。その時に、三浦さんは支配人が自分から意見を言えるまで待ったり、意見を促したりしていました。三浦さんの関わりで、支配人は自ら意見を伝えることができ、弁当の企画にその意見が採用されました。新しい弁当ができた時に、三浦さんの計らいで、開発した弁当に支配人の名前が加えられました。発売日当日には三浦さんも現場に立ち、弁当を売り、お客様の反応が良いことを支配人に随時伝えていました。結局、お弁当は完売して大成功だったとのことです。
リーダーは「任せる」ことも重要ですが、部下が成功するまでにサポートをすることが重要だと思いました。部下は仕事を任せてもらい、成功体験を得ることができれば、自信を持ち、高い成果を出すことができると思います。

今回のプロフェッショナルを見て、三浦さんは、現場の力を最大限に引き出して成果を出すリーダーだと思いました。社員一人一人が自分らしさを最大限出し、自信を持って仕事をすることで、高い成果を出せる組織になると思います。三浦さんは、働くこととは何かという質問に対して、「働くことは楽しむこと、楽しんでいる人には誰もかなわない」と言っています。三浦さんは自分自身も「楽しむ」ことを意識していますが、同時に部下が「働くことを楽しむ」ことができるように、リーダーとして意識して行動していると感じました。