2012年7月29日日曜日

あなたはどんなことに心を動かされますか?


リーダーとして、社員が主体的に行動してくれないと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
人が納得して行動するためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

今回のブログでは、この疑問に答える一つの考え方として、ハーバードビジネススクールの人気教授であるジョン・コッターが書いた「ジョン・コッターの企業変革ノート」で書かれている考え方をご紹介します。

この本では、組織変革で重要な考え方を、複数の成功事例を用いて紹介しています。コッターは、組織を変革するためには、戦略・組織構造・制度を変えるだけでなく、「社員の行動」を変えることが肝であると言っています。そして社員の行動を変えるためには、理屈だけではなく、「心や感情」に訴えて、問題点や解決策に気づいてもらうほうが効果的であると言っています。「分析し、考えて、変化する」流れよりも、「見て、感じて、変化する」流れのほうが強力であるとのこと。

「見る」:事実を具体的に、5感など心に訴えかけるように伝える。反発されないために、感情的にならず冷静に事実を伝える。
「感じる」:心が動かされ、行動を妨げる感情が抑えられて、変革を促進する感情が高まる。
「変化する」:感情が高まることにより、行動が変化する。

この本で紹介されているある製造会社の事例を紹介します。その製造会社は、コスト削減のために購買プロセスを大幅に見直す取り組みをしようと考えました。まずは、事実を確認するために、工場で何種類の手袋を購入して、費用はいくらかかっているのかを調査しました。調査の結果では、工場で購入している手袋は424種類もあったとのことです。手袋は工場ごとに発注先が異なり、価格交渉も個別に行っている。同じ手袋であるのに、ある工場では5ドル、別の工場では17ドルで購入していたという状態であったとのこと。手袋の問題は一例であって、会社全体で購買プロセスに関して大きな問題になっていたことがこの調査からわかりました。そこで社員に問題点を意識してもらうために行ったことは、すべての手袋424種類を集めて、それぞれの手袋に価格と工場名を書いたタグをつけ、役員室のテーブルに並べました。まずは各部門のトップを役員室に招いて見てもらいました。どの幹部も否定できない事実を「見て」、いかに非効率でコストを意識していないかを「感じる」ことにより、心が動かされ、「変わる」ことの必要性を実感したとのこと。また、現場の工場へもこの手袋が順次持ちこまれ多くの従業員の目に触れることで変革への意識が高まり、購買プロセスの変革につながったとのことです。

また、この本以外の事例として、韓国のサムスンの例をご紹介します。サムスンでは、1993年の夏に製造した携帯電話の25%が不良品であることが発覚しました。そこで、サムスンは製品の品質を社員に意識させるために、販売しようとしていた携帯電話の在庫15万機すべてを回収して運動場に高く積んだそうです。社員が運動場に集められると、社員の目の前で不良品に火をつけてすべて焼いてしまったとのことです。社員は自分達が苦労してつくった携帯が焼かれている光景を見て、涙を流していたとのことです。不良品を出してしまうことで、すべての在庫を回収して破棄しなければいけないという事実を具体的に「見せ」、「感じる」ことによって危機感を持たせ、「変わる」ためのきっかけになったのだと思います。その後、サムスンの携帯電話は主力事業になり、今のスマートフォンの好調な売上にもつながったのかもしれません。

以上、人が納得して行動するための考え方の一つをご紹介しました。リーダーとして、戦略など理屈を社員に伝えることは重要なのは言うまでもないことです。ただし、理屈だけでは人を動かすのは難しいのではないでしょうか。当たり前のことだと思いますが、この本を読み、人は「理屈」で納得するだけでなく、「感情」が動かされた時にはじめて行動を変えるのだと実感しました。この考え方は、人に納得してもらい行動してもらうことが必要なビジネスの世界では、リーダーだけでなく誰もが参考になると思います。

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