2012年5月13日日曜日

体験学習とビジネスケースの手法を使った研修の事例


前回は、体験学習とビジネスケースの効果についてご紹介しましたが、今回は事例として、この手法を使って行っているファシリテーション研修をご紹介します。


ファシリテーション研修では、会議における議論を活性化させ、最適な結論と、納得感の高い合意形成プロセスを作り出す「会議運営におけるリーダーシップ」を育成するプログラムです。研修では、体験学習でファシリテーションの難しさと必要性を体感し、ビジネスケースを利用することで、実際にビジネスで活かせるスキルを学びます。

体験学習では、「Paper Tower」というアクティビティを行います。このアクティビティは、配布される紙(A4用紙40枚)を使って、45秒間で他のチームよりも高い塔を作るというものです。実際に塔を作る前に作戦会議を10分間行います。作戦会議の間は、紙は一枚だけしか使えません。このアクティビティを行う時に、作戦会議で起こりがちなことは、以下です。



・会議の目的・ゴールを決めずに話はじめる
・作戦会議の最初に、会議をどのように進めるのか話をせずに具体的な紙の折り方や、積み上げ 方の議論をする
・全員からいろんなアイデアが出て、やり方などまとめられないまま本番がスタートしてしまう

そして、本番ではそれぞれ個人が紙を折ることなど自分の作業に集中し、時間があっという間
に経ってしまい、気付けば考えたことがほとんどできず終わってしまうことが多いです。

研修の参加者は、このアクティビティの目的を達成するために、会議として最善のアウトプットを出すためには、以下が重要であることに気付きます。

・目的・ゴール:会議の目的・ゴールを明確にして進めること
・会議の計画:会議を始める前に、10分間の会議の使い方として、何のために、何を、どれぐらい
の時間使って話をするのか具体的に計画を立てる
・プロセス:目標を達成するためには、具体的に会議をどのようなプロセス(会議での意見の引き
出し方、まとめ方)で行うのか具体的にイメージする
      
参加者は、アクティビティで実体験をすることで、会議運営の難しさと重要性に気付き、会議の時にファシリテーションの考え方が重要であることを納得感を持って理解することができます。

次に、ビジネスケースを利用して、実務の会議運営で活かせるファシリテーションのプロセスとスキルを具体的に学びます。利用するケースは、例えば「営業ミーティング」を利用します。営業ミーティングでうまくファシリテーションができない課長を通して、ビジネスの会議で必要なファシリテーションのプロセスとスキルを学びます。このケースの概要に関しては以下になります。

「某社で定例の営業ミーティングが行われている。営業メンバー10名が参加し、ファシリテーターは課長。取引のないX社からの新製品の問い合わせに関して、担当決めの議論を行います。課長は、X社の営業担当を決めようとするが、メンバーの口数は少なく、前向きな声も聞かれない。最終的には、X社の同業に新製品の提案をした経験はあるが、あまり営業の成果を出すことが出来ていないメンバーの一人に決まってしまう。」

ビジネスケースで学んでいく際は、体験学習で学んだ気付きに加えて、ビジネスの場で重要な考え方やスキルを学びます。

例えば、体験学習で学んだ「目的・ゴール」に関しては、このケースでは、ビジネスの会議でも目的・ゴールを明確にして、正しく共有することの重要性を学びます。このケースでは、ファシリテーターである課長は、「X社の担当を決めること」を会議の目的にしているが、「X社体験学習で学んだ「目標」に対応するかしないか」、「X社と取引をするためにはどのようなことをすれば良いのか」という目的にする必要があったかもしれません。会議で考えるべきこと、考える目的を明確にするためには、ロジカルシンキングのイシューの考え方を学びます。

体験学習で学んだ「会議の計画」に関しては、ビジネスでは、会議前に自分なりの会議のシナリオを準備し、参加者の立場、関心、懸念点を考慮して、誰が何を言いそうか、どんな意見・どんな論点が出てきそうかを考えておくことの重要性を学びます。このケースで、課長は、事前に自分なりのシナリオを持って会議を行っていないと考えられます。また、スキルとして、「論点を押さえる(予測する)スキル」を学びます。具体的には、ロジカルシンキングのMECEやロジックツリーを使って、会議前にどのような論点が出てきそうかを予測することで、会議を効率的・効果的に進めるスキルを学びます。

そして最後に、体験学習で学んだ「プロセス」に関しては、議論を活性化するために、傾聴すること、発言の意図をくみ取ること、論点を整理すること、対立の調整をすることの重要性を学びます。このケースで、課長は、参加者の発言を傾聴したり、整理をしていません。スキルとしては、傾聴のスキル、要約のスキル、論点整理のスキル、意見対立の調整スキルなどを学びます。

以上、体験学習とビジネスケースを利用した研修の事例をご紹介させていただきました。興味がある方やご質問があれば、ぜひご連絡ください。

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