2012年3月25日日曜日

体験学習の特徴(自身の強みと弱みを知る)


前回のブログでは、体験学習の研修について書きましたが、
今回のブログでは、体験学習の特徴である
「自分の素が出やすく、自分の強み・弱みを認識することができる」
ことについて、私の経験も踏まえてご紹介していきたいと思います。

私は企業に対して、多くの体験学習の研修を提供してきて、
他者からフィードバックもらうことによって、自分自身の強みや
弱みに気付くことができたという感想を持つ参加者が多かったと
感じています。

例えば、ある大手メーカーの次世代リーダー研修を行った際の経験を
ご紹介します。

対象者は30代中盤~50才までのマネジャーでした。
この研修では、チームメンバーの力を引き出し、チームで成果を上げる力
を身につけてほしいという目的もありました。

研修は体験学習の手法を使って、山でアウトドアの研修を行いました。
6~7人でチームになって、山に多くのチェックポイントを設置して、
制限時間内に他のチームよりも多くチェックポイントを通過してポイントを
獲得し、ゴールするいうアクティビティを行いました。各チームごとに地図と
コンパスを渡して自分達で行動計画を立てます。

私はファシリテーターとして、一つのチームを担当しました。
活動では、チームメンバーのなかから一人リーダーを決めました。
リーダーの中野さん(仮称)は体力もあり、モチベーションも高い方でした。
活動がスタートして、最初は全員、計画通りに順調にチェックポイントを通過
してポイントを獲得して行きました。しかし、後半は道に迷ったり、登り下りの
急こう配の山道で、肉体的・精神的に追い込まれていき、だんだん口数が
少なくなっていきました。
リーダーである中野さんは、他のメンバーの代わりに地図とコンパスを持って、
一人でルートと計画を確認し、チームの先頭でチームを引っ張っていこうと
していました。また、チームを盛り上げようと、ひたすら「がんばろう」、
「自分に負けるな」「絶対達成するぞ」という掛け声をかけていました。
結局ゴールには到着しましたが、大幅に到着時間が遅れてしまい、ポイントの
獲得結果も3チーム中、最下位でした。
アクティビティでの振り返りでは、全員からリーダーである中野さんへの
フィードバックがあり、メンバーからは、「中野さんはがんばっていた」との声も
ありながらも、
「中野さんだけでなく、全員で進む方向や計画を随時確認して進めたほうがよかった。」
「みんながんばっているのに、中野さんからさらにがんばろうと何度も言われて、
やる気が下がってしまった。」
という声があがっていました。

中野さんはメンバーからのフィードバックを受けて、とても落ち込んでいましたが、
とても大きな気付きがあったと話をしていました。
例えば、リーダーとして責任を一人で背負い自分一人ですべて決めるのではなく、
メンバーの力も借りて全員で納得した決断を出すことが大事であるということ。
そして、リーダーとして、メンバーに声をかける時、全員に一方的に伝えるのではなく、
メンバーそれぞれの状況を把握して、相手に合わせてやる気になる声掛けが重要で
あること。

そして、中野さんは、研修の最後にコメントとして以下を発表してくれました。

「アクティビティを通して、毎回フィードバックを得ることができ、自分の良い点、悪い点を
知ることができてよかったです。なかなか自分のことをはっきりと言われる機会がないので、
非常に新鮮な体験でした。」
「いつも仕事でメンバーに対して行っている行動が出てしまった。

仕事では、自分ですべて決めてメンバーに指示を出して、叱咤激励をしてメンバーを
動かしていて、チームで成果を出すことはしていなかったと思います。
今後は、自分のやり方を見直して、チームで成果を出せ、メンバーがやる気を持って
行動ができるように、物事を決める時からそれぞれのメンバーを巻き込んで、
一人ひとりのメンバーの状況を理解して、対応していくことが重要だと気付きました。」


自分の経験から、体験学習についての事例をご紹介させていただきました。
中野さんは実際にチームでのアクティビティを通して、メンバーからフィードバックを
得ることで自分をしっかりと振り返ることができていたのたと思います。

仕事のなかでは、日々の業務に追われ、なかなか自身をしっかり振り返り、
行動を変えることは難しいと思います。また、私が営業時に研修担当のお客様と話を
する際に、社員の意識を変えて行動を変えてもらうことの難しさをよく聞きます。
自分の強み・弱みが認識して、行動変容につなげる一つ手法として、体験学習も
、人材育成を考える際に参考にしていただければうれしいです。

2012年3月18日日曜日

体験学習の研修とは



このブログでは人材育成に関して関心がある方に対して、
人材開発を行っている会社に勤めている私が、日々感じた
ことについて書いていきたいと思っています。

私は現在、株式会社シンスターという人材開発の研修を行っている
会社で、研修の企画、開発や講師を行っています。現在の会社に
勤める前は、別の会社で、主に体験学習という手法を使って、
企業や学校に対して人材開発・組織開発の研修を提供してきました。

今回のブログでは、体験学習の研修について聞いたことがない方
向けにご紹介させていただきます。

体験学習とは、座学で講師から教えてもらったり、本や資料から知識を
得るのではなく、体を使った体験(アクティビティ)を通して気づきや
学びを得て、職場での行動変容を起こすことを目的にした学習法です。


アクティビティで、具体的に行う例としては以下です。

・ヘリウムリング
全員で内側向きの円になり、全員の人差し指の上に乗せたフラフープを、
指から離さずに地面に下ろすことができれば、目標を達成。
(途中で誰か一人でも指が離れた場合はやり直し)
⇒チームで目標を達成することの難しさと、協力して目標を達成するために
必要な行動を体験を通して理解する。

・タワービルディング
リーダーから目隠しをしたメンバーに指示を出し、テーブルの上に
置かれた物を、与えられた道具(輪ゴムと紐)のみを使って、所定
時間内に指定した形に組み立てる。
⇒立場が違う関係性(リーダーとメンバー)において、目標を達成する
ために必要なリーダーとしての行動を疑似体験を通して理解する。

など、研修目的によって様々な気づきを得ることができるアクティビティ
があります。


体験学習で学ぶプロセスとしては、以下①~④を繰り返し行っていきます。

①体験:アクティビティとして、チームで目標達成に向けて取り組む
②振り返り:アクティビティを振り返り、チームで目標を達成する時に必要な姿勢・
行動を理解する
③分析:アクティビティからの学びが、実務・仕事にどのように活かせるのか考える
④仮説化:実務・仕事で活かせる行動の仮説を立て、実行して検証する

チームで協力しながら目標を達成するというシンプルなアクティビティ
を通して、仕事のなかで組織として、目標を達成するために必要な行動を腹落ち感
を持って理解することができます。

また、体験学習の特徴としては、以下2点があります。

・自分の素が出やすく、自分の強み・弱みを認識することができます。
アクティビティでは、無意識の自身の考えや行動の癖が出やすく、自身で
振り返ることができます。また、一緒にワークを行ったメンバーから率直なフィード
バックも得られるため、客観的に自分の強みと弱みを認識することができます。

・受講者同士の関係が深まります。
同じ目標に向かって意見を出し合い、体を動かしながら取り組むことによって、
お互いの関係性が深まります。

研修で、より気付きを深めて行動変容につなげていきたいと考えている研修担当者
の方は検討してみてはいかがでしょうか。